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エリア:
- オセアニア > パプアニューギニア > ゴロカ
- オセアニア > パプアニューギニア > パプアニューギニアその他の都市
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テーマ:
- 観光地
- / ハイキング・登山
- / 自然・植物
〜セピック、パリンベ、チャンブリ、アイボム、カンガナム、ウェワク、マプリック、ゴロカ、アサロ、ケマセ、マッドメン、クロコダイルマン〜
今回機会あって、おそらく世界でもっとも石器時代に近いであろうパプアニューギニアの最深部・セピック川中流域の集落に行ってきました。世界中に秘境といわれる地域は多数ありますが、今回訪れたパプアニューギニアセピック川中流域では最近まで首狩が行われていたというのですから誰が見ても間違いなく秘境中の秘境です。うっそうと繁る広大なジャングルの中を静かに蛇行する大河セピックは全長1,000kmを超え、その流域には小さな村落が点在し、土着の文化が根強く残っています。精霊信仰、精霊の家、プリミティブアート(原始美術)や独自の生活様式を守る民族たち・・・。何世紀に渡り文明と隔絶してきた神秘のエリアでは我々の想像を絶する世界を体感することができます。
今回の旅程は以下の通りです。
11月2日
21:05分:成田発ニューギニア航空でポートモレスビーへ
11月3日
04:55:ポートモレスビー着。入国審査・税関審査。トランジットホテルで朝食休憩
09:00:ニューギニア航空・国内線でゴロカへ。
10:00:ゴロカ着。ホテルにて昼食後アサロ渓谷のマッドメンの村訪問
11月4日
09:00:ケマセ村奇石・洞窟探検ツアー
11月5日
09:35:ニューギニア航空・国内線でポートモレスビーへ。
10:45:ポートモレスビー着。トランジットホテルでランチ休憩
15:10:ニューギニア航空・国内線でウェワクへ。
17:20:ウェワク着。
11月6日
午前:大きな荷物をウェワクのホテルに預け、パグイに移動。
午後:カヌーでセピック川を下り、パグイからパリンベ村へ。精霊の館「ハウスタンバラン」訪問
11月7日
終日:ミドルセピック流域の村訪問ツアー
チャンブリ村、アイボム村、カンガナム村を訪問しマーケット、精霊の館「ハウスタンバラン」、シンシン鑑賞
11月8日
午前:カヌーでパグイへ
午後:マプリックのアバンガイ村にて精霊の館「ハウスタンバラン」、シンシン鑑賞後ウェワクへ。
11月9日
11:05:ニューギニア航空・国内線でポートモレスビーへ。
12:55:ポートモレスビー着。トランジットホテルでランチ休憩
14:10:ポートモレスビー発ニューギニア航空で成田へ。
19:55:成田着。
ゴロカ近郊のアサロ渓谷訪問ツアーに関してはすでにほかスタッフの報告がありますので割愛させて頂き、今回は上記の旅程のうち、2泊3日のセピック中流域・カヌーサファリの様子をメインに報告いたします。
痛快!冒険心をくすぐるセピック川カヌーサファリ
ウェワクで前泊した翌朝07:30頃、ツアーをオーガナイズするSepik Adventure Toursのガイドさんが笑顔でお出迎えしてくれた。天気は快晴!まずはセピック川流域の旅の玄関口パグエイまでセピック・ハイウエーを車で約4時間の旅。舗装された道路脇に民家が見え始めるとやっとパプアニューギニアに来た気分になってなんだか興奮してくる。初めは快適に走っていたのだが、このハイウエー、進むにしたがって道路があなぼこだらけで、とにかく揺れる。途中フルーツマーケットなどに立ち寄って休憩をとったのち、やっとパグエイに到着。ここで2時間ほどランチ休憩を取り、迎えのガイドさんが到着したので、いよいよセピック川へ乗り出す。モーター付きのカヌー(一本の丸太をくくり抜き作られる丸木舟)で川を下るのですが、これが爽快!!大きなセピック川を、ジャングルや水辺を飛ぶ鳥、時折見える高床式住居の村を眺めながら進む体験は最高。時々カヌーですれ違う人や岸辺にいる人たちがみんな手を振ってくれる。しばらくすると、ショートカットだと言ってジャングルの中の細い川(もともとは道)に入ってくれた。時にサバイバルナイフで水草をカットし丈の高い水草が茂っている中を縫うようにして上流を目指す。熱帯雨林の中をカヌーで進んで行くその体験は、まさにアドベンチャー!現実だとは信じられないようなその光景に私は圧倒され、この上なく興奮しました。
そして夕方ごろ、今回2泊の宿をとるパリンベ村に到着した。基本的に電気も水道もない集落でのウルルン滞在の始まりです。ここでの滞在がどのようなものなのか、これからどんなものを見ることができるのか考えるとワクワクがとまりません。
ここパリンベ村は高床式の草葺屋根の原始的な家が数件建つ小さな集落です。早速村の村長さんと挨拶。村の人たちはみんな親切で奥ゆかしくはにかみ屋が多い。川で水遊びに興じる子供たちも愛嬌がありとても可愛らしい。セピック訪問前に心配していた蚊は想像していたほど多くはなかったのですがそれでも多少いるので長袖や蚊取り線香、マラリア予防薬の服用はやはり必須です。蚊帳やマッドレスは用意してくれます。ホームステイとして村人と同じ家に滞在するのではなく、基本的にはゲストハウス用に用意された比較的新し目の高床式の家が旅行者の滞在先となります。あくまで訪問者向けに建てたものではあるものの施設は文明社会とはかけ離れた原始的なものでホテルに滞在するよりもずっと刺激的でテンションもあがります。早速家の内部へ。内部は質素で家の中には、調理器具や食器、少しの衣類やバッグ、寝具にソーラーライトがあるだけという感じでTV などはありません(ただ最近は携帯電話だけは持っている村人やお金のあるところは発電機を持っている家もあるそうです。)水道はないため、顔や手を洗ったりする場合は、雨水をためる貯水タンクの水を利用する形となります。ただしゲストの飲料水としては使えないため、ゲスト用には内地から持ってきたミネラルウオーターを用意しているのでご安心ください。ただしシャワーなどはないため、体を洗いたい場合はセピック川で沐浴するしかありません。トイレもありますが、小屋の中に盛り土を作りその上に便座を載せた簡易的なものです。文明社会とは分断された集落での生活は慣れるまで一見不便を感じますが、慣れてしまえば住めば都です。自然を壊すことなくその懐に抱かれながら生活する彼らの生活が心地よく感じるかもしれません。
精霊の館ハウスタンバランへ。クロコダイルマンとの遭遇!!
仕切られたゲスト用の部屋に荷物を置き、カヌーで近くのハウスタンバラン見学に連れて行ってもらいました。セピック川流域には村落が点々とありますが、それぞれ異なる部族が住み、今も伝統的な生活様式を守っています。中でも有名なのが精霊の館ハウスタンバランです。祭祀(タンバラン)を司る館(ハウス)という意味で、精霊信仰に基づく独特の文化の中心的存在です。この館には祖先の霊や自然全ての精霊が降臨すると信じられていて、数々の伝統的な秘儀が伝えられています。特に、部族の男にとって重要な場所で、女性の子宮だと考えられていて、そこで成人になるための痛みを伴う通過儀礼(イニシエーション)を受け、部族の一員になるための様々な教育が施されるのです。セピック流域に数多いワニ信仰の場合、男たちはある年齢(15歳前後)に達すると、ハウスタンバランの2階に集められ、鋭く尖った竹で体中を傷つけられます。血まみれになりあまりの痛さに気絶し、やがてその傷が突起となって体に刻まれるころ、彼らは一人前の男(クロコダイルマン)となるのです。そんな神聖な場所の為原則女性や他部族の立ち入りを厳しく禁止していますが、一部のハウスタンバランでは観光客は入ることが認められているそうです。
パリンベ村には2つのハウスタンバランがあり、村の奥に突如現れる大きな建物は、他の建物とは全く異なる圧倒的な神秘的雰囲気をまとっていました。薄暗い内部にあるおびただしい数の仮面もまた、ある種異様とも言える独特な神聖さを醸し出していました。
はしごを注意深く登り二階へ上ると、十数名の村人が待機していました。その中によく見ると背中に突起状の傷が無数にある男がいました。クロコダイルマンです。興奮してシャッターを切りましたが撮影する場合は10〜20キナのチップを要求されますのでご注意ください。内部にある仮面やストーリーボード、ハウスタンバランのパーツなどの民芸品を製作できる人は信仰の変化とともに年々減ってきており、そのほとんどが一点もので貴重です。比較的安価で購入することができるため、気にいったものがあれば機会を逃さずその場で購入されることをおすすめします。
見学後、ゲストハウスへ戻り夕食。さすがにセピックの食事は外国人の口に合わないのであろう。ガイドさんは船に積んであった食料を持ち込んで食事を作りはじめる。チキンとスチームライス、デザートにパイナップルを出してもらった。そして、蚊が多いため、蚊帳の中に用意してくれた布団へ入り午後10時頃就寝した。
夜のセピック川へ。クロコダイルハンティングツアーに大興奮!!
翌朝村で飼っているニワトリの鳴き声で起床。サンドイッチの朝食後、カヌーで村のマーケットへ。不定期で行われるそうで、各家庭で収穫した果物などを持ち寄った青空市。ビートルナッツやウオーターメロン、スイカ、ココナツ、パイナップル、サクサクなどが並んでいて家族総出できているためかなり賑わっていました。その後、釜戸などの土製品の制作でしられるアイボム村へ行き、続いてチャンブリ湖までカヌーで進み、チャンブリ村を訪問し、パリンベとは雰囲気が異なるハウスタンバランを見学しました。その後、カンガナム村へ。ここでは高さ15mはあろうかという古代の神殿のようなハウスタンバランを見学。内部には様々な彫刻やペイントがなされていて、同時に神社の境内のような、張りつめた空気も感じました。中には数名クロコダイルマンもいました。ここでシンシンを見学しました。建物の下の方で大きな民族太鼓の音が「ポンポンポン」と聞こえてきてシンシンが始まった。脚を交互に音に合わせて持ち上げ踊る。仮面に取り付けられた真っ赤な花が揺れ、2人の微妙に異なる動きが一体となってシンシンをつくり出す。これでその年の収穫などを祝うのだそうです。ガイドさんの話では9月の収穫祭ではかなり大きなスケールのシンシンが見られるらしい。乾季ではあるが、シンシンを見るならばその時期がベストのようです。 その後、その後パリンベの宿へ戻りました。夕食まで時間があったので宿帳の書き込みを見ていたら、夜のセピック川で行うクロコダイルハンティングが絶対参加すべきとの書き込みを発見し、急遽ガイドさんに頼んでアレンジしてもらった。夕食後、クロコダイルハンティングが得意だと豪語する村長さんと船頭さんと3人で夜のセピック川へ繰り出す。蚊が多いと踏んで虫よけ対策をばっちりしていったが、思ったほどかに悩まされることはありませんでした。月明かりの中懐中電灯で遠くからクロコダイルが身を隠しそうな岸辺を照らし、光に反射して光るクロコダイルの目を手掛かりに探すというアナログな捕獲方法でしたが、夜のセピック川をクルーズしているだけでも神秘的で刺激的な体験でした。なかなか見つからないため半ばあきらめかけていたその時村長が何かを叫び槍を岸辺に放ちました。クロコダイルがいたというのです。しかもかなり大きいクロコダイルが。槍を放った場所へカヌーを近づけます。緊張感が半端じゃありません。そんな大きなクロコダイルに襲われたら丸木舟にのる我々はたまったものではありません。残念ながら取り逃がしたようですが、約2時間の夜のハンティング体験はスリリングで貴重な体験となりました。ちなみに蛇足となりますが、私がパグイへ戻る日の夕方よりパリンベ村の対岸のカンガナム村でガチのイニシエーションがありました。イニシエーションのスケジュールは事前にはわからず通常旅行者は見ることはできません。今回もこの日の夜突然ガイドより500キナ(約2万円)であのクロコダイルマンの儀式を生でみるチャンスがあることを知らされたのです。私はスケジュールの関係でみることができませんでしたがたまたまパリンベで会った日本人女子Yさんは迷った挙句大枚をはたいてこの儀式を見たそうで、想像を絶する神秘的な光景にめちゃくちゃ感激したそうです。うらやましい!!通常村などいく場合、仮面などの民芸品の購入以外はお金を使うことがないため大金を両替し持参することはないかと思いますがこんなこともあるので、ある程度両替しそれなりの現金を持参していたほうがいいかもしれません。
漫画” マッドメン”の世界へ!異空間のハウスタンバラン内に潜入!!
翌日朝、セピックをあとにしパグイヘ。出発まで村の子供たちとトランプで遊びました。名残惜しい思いを旨に村をあとにしました。カヌーの上で心地よい風を受けながら、2日間の記憶が走馬灯のようによみがえってきます。11時頃パグイに到着。ガイドにお礼をいってお別れです。パグイでボックスランチを食べている間にSepik Adventure Toursのガイドさんと合流。ウェワクへ戻る前に、マプリックにある村に立ち寄ってもらいました。ここのハウスタンバラン(精霊の家)は、漫画” マッドメン”(諸星大二郎著) に出てくるのです。マプリックでは、ビッグマン(村のリーダー)をはじめとして複数の人が案内してくれた。このハウスタンバランは道路のすぐ横にあって秘境感がないのが残念でしたがそれを吹き飛ばすくらいその存在感はすごかったです。セピック川沿いの村でもいつつかハウスタンバランを訪れましたが入口の装飾的にはマプリックのものが一番であろう。少し色はくすんでいるものの、圧倒的な大きさと佇まいは独特な神聖な雰囲気を出していました。裏に回るように言われてそちらから入ると、中には暗い中に男たちと太鼓。さらに奥に行くように促され、壁で隔てられた先に一面樹皮絵で飾られた部屋があった。真ん中にチーフだという等身大の像があり、両側に化粧と衣装で全身を包んだ若い男性が二人、黙って立っている。目をとじてリズムを取るように体を揺らしていてなんだか神話の世界へ紛れ込んだような気分だった。熱気と暗闇の雰囲気にのまれて夢中でシャッターをおしたのは言うまでもない。このハウスタンバランは男性しか入れず(観光客は別)、年に2回の収穫祭などで使用するとのこと。
そこから狭い入口をとおって外へでると、最初に見た三角形の正面に出た。そこでまた化粧した男女のパフォーマンスを見せてもらう。こちらも見ごたえ十分でした。
ウェワクへ戻り帰国の途へ。
高床式の原始的な家に住み、手漕ぎのカヌーで魚を釣り、ジャングルの一部を開拓して農業を営む、精霊を信仰し、巨大な精霊の館ハウスタンバランでイニシエーションが行われる・・・。なんだか日本の原始時代にタイムスリップしたようなセピックでの日々。「われわれは生かされている。自然の力によって・・・」そんなパリンベ村の村長さんの言葉が忘れられない。文明社会で失われてしまった大切なものがここには残っている。そんなことを感じた2日間での体験をこの先ずっと忘れることはないだろう。弊社でもセピックを訪れるツアーを催行しておりますので一度訪れてみてはいかがでしょうか。きっと忘れられない貴重な体験となるはずです。
お勧め度
ミドルセピック 5つ星
秘境中の秘境!想像を絶する神秘的な体験をしたい方におすすめです
アサロ渓谷のマッドメンの村訪問 4つ星
泥人間マットメンの村はパプアへ行ったら必ず訪れたい
ケマセ村奇石・洞窟探検ツアー 3つ星
奇石・洞窟がある森の中の探検も楽しいが愛嬌がある村人との交流も楽しい
(2016年11月 渡邊竜一)
マプリックのハウスタンバランにて
カンガナム村のハウスタンバランにて
クロコダイルマンと記念撮影
今回機会あって、おそらく世界でもっとも石器時代に近いであろうパプアニューギニアの最深部・セピック川中流域の集落に行ってきました。世界中に秘境といわれる地域は多数ありますが、今回訪れたパプアニューギニアセピック川中流域では最近まで首狩が行われていたというのですから誰が見ても間違いなく秘境中の秘境です。うっそうと繁る広大なジャングルの中を静かに蛇行する大河セピックは全長1,000kmを超え、その流域には小さな村落が点在し、土着の文化が根強く残っています。精霊信仰、精霊の家、プリミティブアート(原始美術)や独自の生活様式を守る民族たち・・・。何世紀に渡り文明と隔絶してきた神秘のエリアでは我々の想像を絶する世界を体感することができます。
今回の旅程は以下の通りです。
11月2日
21:05分:成田発ニューギニア航空でポートモレスビーへ
11月3日
04:55:ポートモレスビー着。入国審査・税関審査。トランジットホテルで朝食休憩
09:00:ニューギニア航空・国内線でゴロカへ。
10:00:ゴロカ着。ホテルにて昼食後アサロ渓谷のマッドメンの村訪問
11月4日
09:00:ケマセ村奇石・洞窟探検ツアー
11月5日
09:35:ニューギニア航空・国内線でポートモレスビーへ。
10:45:ポートモレスビー着。トランジットホテルでランチ休憩
15:10:ニューギニア航空・国内線でウェワクへ。
17:20:ウェワク着。
11月6日
午前:大きな荷物をウェワクのホテルに預け、パグイに移動。
午後:カヌーでセピック川を下り、パグイからパリンベ村へ。精霊の館「ハウスタンバラン」訪問
11月7日
終日:ミドルセピック流域の村訪問ツアー
チャンブリ村、アイボム村、カンガナム村を訪問しマーケット、精霊の館「ハウスタンバラン」、シンシン鑑賞
11月8日
午前:カヌーでパグイへ
午後:マプリックのアバンガイ村にて精霊の館「ハウスタンバラン」、シンシン鑑賞後ウェワクへ。
11月9日
11:05:ニューギニア航空・国内線でポートモレスビーへ。
12:55:ポートモレスビー着。トランジットホテルでランチ休憩
14:10:ポートモレスビー発ニューギニア航空で成田へ。
19:55:成田着。
ゴロカ近郊のアサロ渓谷訪問ツアーに関してはすでにほかスタッフの報告がありますので割愛させて頂き、今回は上記の旅程のうち、2泊3日のセピック中流域・カヌーサファリの様子をメインに報告いたします。
痛快!冒険心をくすぐるセピック川カヌーサファリ
セピック川カヌーサファリ
セピック川カヌーサファリ
パリンベ村に到着
パリンベ村の素朴な住居
ゲストハウスではガイドさんが料理してくれる
蚊帳つきのゲストハウス
カヌーで奥地へ進む
ウェワクで前泊した翌朝07:30頃、ツアーをオーガナイズするSepik Adventure Toursのガイドさんが笑顔でお出迎えしてくれた。天気は快晴!まずはセピック川流域の旅の玄関口パグエイまでセピック・ハイウエーを車で約4時間の旅。舗装された道路脇に民家が見え始めるとやっとパプアニューギニアに来た気分になってなんだか興奮してくる。初めは快適に走っていたのだが、このハイウエー、進むにしたがって道路があなぼこだらけで、とにかく揺れる。途中フルーツマーケットなどに立ち寄って休憩をとったのち、やっとパグエイに到着。ここで2時間ほどランチ休憩を取り、迎えのガイドさんが到着したので、いよいよセピック川へ乗り出す。モーター付きのカヌー(一本の丸太をくくり抜き作られる丸木舟)で川を下るのですが、これが爽快!!大きなセピック川を、ジャングルや水辺を飛ぶ鳥、時折見える高床式住居の村を眺めながら進む体験は最高。時々カヌーですれ違う人や岸辺にいる人たちがみんな手を振ってくれる。しばらくすると、ショートカットだと言ってジャングルの中の細い川(もともとは道)に入ってくれた。時にサバイバルナイフで水草をカットし丈の高い水草が茂っている中を縫うようにして上流を目指す。熱帯雨林の中をカヌーで進んで行くその体験は、まさにアドベンチャー!現実だとは信じられないようなその光景に私は圧倒され、この上なく興奮しました。
そして夕方ごろ、今回2泊の宿をとるパリンベ村に到着した。基本的に電気も水道もない集落でのウルルン滞在の始まりです。ここでの滞在がどのようなものなのか、これからどんなものを見ることができるのか考えるとワクワクがとまりません。
ここパリンベ村は高床式の草葺屋根の原始的な家が数件建つ小さな集落です。早速村の村長さんと挨拶。村の人たちはみんな親切で奥ゆかしくはにかみ屋が多い。川で水遊びに興じる子供たちも愛嬌がありとても可愛らしい。セピック訪問前に心配していた蚊は想像していたほど多くはなかったのですがそれでも多少いるので長袖や蚊取り線香、マラリア予防薬の服用はやはり必須です。蚊帳やマッドレスは用意してくれます。ホームステイとして村人と同じ家に滞在するのではなく、基本的にはゲストハウス用に用意された比較的新し目の高床式の家が旅行者の滞在先となります。あくまで訪問者向けに建てたものではあるものの施設は文明社会とはかけ離れた原始的なものでホテルに滞在するよりもずっと刺激的でテンションもあがります。早速家の内部へ。内部は質素で家の中には、調理器具や食器、少しの衣類やバッグ、寝具にソーラーライトがあるだけという感じでTV などはありません(ただ最近は携帯電話だけは持っている村人やお金のあるところは発電機を持っている家もあるそうです。)水道はないため、顔や手を洗ったりする場合は、雨水をためる貯水タンクの水を利用する形となります。ただしゲストの飲料水としては使えないため、ゲスト用には内地から持ってきたミネラルウオーターを用意しているのでご安心ください。ただしシャワーなどはないため、体を洗いたい場合はセピック川で沐浴するしかありません。トイレもありますが、小屋の中に盛り土を作りその上に便座を載せた簡易的なものです。文明社会とは分断された集落での生活は慣れるまで一見不便を感じますが、慣れてしまえば住めば都です。自然を壊すことなくその懐に抱かれながら生活する彼らの生活が心地よく感じるかもしれません。
精霊の館ハウスタンバランへ。クロコダイルマンとの遭遇!!
パリンベ村のハウスタンバラン
パリンベ村のハウスタンバラン
ハウスタンバラン内に待機する男たち
ハウスタンバラン内に並ぶ仮面の数々
ハウスタンバラン内の仮面
ハウスタンバラン内の仮面
ハウスタンバラン内の木彫
クロコダイルマン
夕暮れのセピック川は神秘的
仕切られたゲスト用の部屋に荷物を置き、カヌーで近くのハウスタンバラン見学に連れて行ってもらいました。セピック川流域には村落が点々とありますが、それぞれ異なる部族が住み、今も伝統的な生活様式を守っています。中でも有名なのが精霊の館ハウスタンバランです。祭祀(タンバラン)を司る館(ハウス)という意味で、精霊信仰に基づく独特の文化の中心的存在です。この館には祖先の霊や自然全ての精霊が降臨すると信じられていて、数々の伝統的な秘儀が伝えられています。特に、部族の男にとって重要な場所で、女性の子宮だと考えられていて、そこで成人になるための痛みを伴う通過儀礼(イニシエーション)を受け、部族の一員になるための様々な教育が施されるのです。セピック流域に数多いワニ信仰の場合、男たちはある年齢(15歳前後)に達すると、ハウスタンバランの2階に集められ、鋭く尖った竹で体中を傷つけられます。血まみれになりあまりの痛さに気絶し、やがてその傷が突起となって体に刻まれるころ、彼らは一人前の男(クロコダイルマン)となるのです。そんな神聖な場所の為原則女性や他部族の立ち入りを厳しく禁止していますが、一部のハウスタンバランでは観光客は入ることが認められているそうです。
パリンベ村には2つのハウスタンバランがあり、村の奥に突如現れる大きな建物は、他の建物とは全く異なる圧倒的な神秘的雰囲気をまとっていました。薄暗い内部にあるおびただしい数の仮面もまた、ある種異様とも言える独特な神聖さを醸し出していました。
はしごを注意深く登り二階へ上ると、十数名の村人が待機していました。その中によく見ると背中に突起状の傷が無数にある男がいました。クロコダイルマンです。興奮してシャッターを切りましたが撮影する場合は10〜20キナのチップを要求されますのでご注意ください。内部にある仮面やストーリーボード、ハウスタンバランのパーツなどの民芸品を製作できる人は信仰の変化とともに年々減ってきており、そのほとんどが一点もので貴重です。比較的安価で購入することができるため、気にいったものがあれば機会を逃さずその場で購入されることをおすすめします。
見学後、ゲストハウスへ戻り夕食。さすがにセピックの食事は外国人の口に合わないのであろう。ガイドさんは船に積んであった食料を持ち込んで食事を作りはじめる。チキンとスチームライス、デザートにパイナップルを出してもらった。そして、蚊が多いため、蚊帳の中に用意してくれた布団へ入り午後10時頃就寝した。
夜のセピック川へ。クロコダイルハンティングツアーに大興奮!!
村の青空市
村の青空市
村の子供たち
チャンブリーのハウスタンバラン
チャンブリーのハウスタンバラン
ハウスタンバラン内にあるクロコダイルの模型
カンガナムのハウスタンバラン
奇妙な仮面
ヤム・シンシン
ヤム・シンシン
ヤム・シンシン
クロコダイルハンティングツアー
ワニと私
愛嬌たっぷりの子供たち
イニシエーションの儀式の準備がされている村のハウスタンバラン
翌朝村で飼っているニワトリの鳴き声で起床。サンドイッチの朝食後、カヌーで村のマーケットへ。不定期で行われるそうで、各家庭で収穫した果物などを持ち寄った青空市。ビートルナッツやウオーターメロン、スイカ、ココナツ、パイナップル、サクサクなどが並んでいて家族総出できているためかなり賑わっていました。その後、釜戸などの土製品の制作でしられるアイボム村へ行き、続いてチャンブリ湖までカヌーで進み、チャンブリ村を訪問し、パリンベとは雰囲気が異なるハウスタンバランを見学しました。その後、カンガナム村へ。ここでは高さ15mはあろうかという古代の神殿のようなハウスタンバランを見学。内部には様々な彫刻やペイントがなされていて、同時に神社の境内のような、張りつめた空気も感じました。中には数名クロコダイルマンもいました。ここでシンシンを見学しました。建物の下の方で大きな民族太鼓の音が「ポンポンポン」と聞こえてきてシンシンが始まった。脚を交互に音に合わせて持ち上げ踊る。仮面に取り付けられた真っ赤な花が揺れ、2人の微妙に異なる動きが一体となってシンシンをつくり出す。これでその年の収穫などを祝うのだそうです。ガイドさんの話では9月の収穫祭ではかなり大きなスケールのシンシンが見られるらしい。乾季ではあるが、シンシンを見るならばその時期がベストのようです。 その後、その後パリンベの宿へ戻りました。夕食まで時間があったので宿帳の書き込みを見ていたら、夜のセピック川で行うクロコダイルハンティングが絶対参加すべきとの書き込みを発見し、急遽ガイドさんに頼んでアレンジしてもらった。夕食後、クロコダイルハンティングが得意だと豪語する村長さんと船頭さんと3人で夜のセピック川へ繰り出す。蚊が多いと踏んで虫よけ対策をばっちりしていったが、思ったほどかに悩まされることはありませんでした。月明かりの中懐中電灯で遠くからクロコダイルが身を隠しそうな岸辺を照らし、光に反射して光るクロコダイルの目を手掛かりに探すというアナログな捕獲方法でしたが、夜のセピック川をクルーズしているだけでも神秘的で刺激的な体験でした。なかなか見つからないため半ばあきらめかけていたその時村長が何かを叫び槍を岸辺に放ちました。クロコダイルがいたというのです。しかもかなり大きいクロコダイルが。槍を放った場所へカヌーを近づけます。緊張感が半端じゃありません。そんな大きなクロコダイルに襲われたら丸木舟にのる我々はたまったものではありません。残念ながら取り逃がしたようですが、約2時間の夜のハンティング体験はスリリングで貴重な体験となりました。ちなみに蛇足となりますが、私がパグイへ戻る日の夕方よりパリンベ村の対岸のカンガナム村でガチのイニシエーションがありました。イニシエーションのスケジュールは事前にはわからず通常旅行者は見ることはできません。今回もこの日の夜突然ガイドより500キナ(約2万円)であのクロコダイルマンの儀式を生でみるチャンスがあることを知らされたのです。私はスケジュールの関係でみることができませんでしたがたまたまパリンベで会った日本人女子Yさんは迷った挙句大枚をはたいてこの儀式を見たそうで、想像を絶する神秘的な光景にめちゃくちゃ感激したそうです。うらやましい!!通常村などいく場合、仮面などの民芸品の購入以外はお金を使うことがないため大金を両替し持参することはないかと思いますがこんなこともあるので、ある程度両替しそれなりの現金を持参していたほうがいいかもしれません。
漫画” マッドメン”の世界へ!異空間のハウスタンバラン内に潜入!!
マプリックのハウスタンバラン
ハウスタンバラン内部でのダンス
ハウスタンバラン内部でのダンス
ハウスタンバラン内部の独特の雰囲気がなんともいえない
ハウスタンバラン内部の独特の雰囲気がなんともいえない
ハウスタンバラン内部の独特の雰囲気がなんともいえない
ハウスタンバラン前でのシンシン
ハウスタンバラン前でのシンシン
ハウスタンバラン前でのシンシン
翌日朝、セピックをあとにしパグイヘ。出発まで村の子供たちとトランプで遊びました。名残惜しい思いを旨に村をあとにしました。カヌーの上で心地よい風を受けながら、2日間の記憶が走馬灯のようによみがえってきます。11時頃パグイに到着。ガイドにお礼をいってお別れです。パグイでボックスランチを食べている間にSepik Adventure Toursのガイドさんと合流。ウェワクへ戻る前に、マプリックにある村に立ち寄ってもらいました。ここのハウスタンバラン(精霊の家)は、漫画” マッドメン”(諸星大二郎著) に出てくるのです。マプリックでは、ビッグマン(村のリーダー)をはじめとして複数の人が案内してくれた。このハウスタンバランは道路のすぐ横にあって秘境感がないのが残念でしたがそれを吹き飛ばすくらいその存在感はすごかったです。セピック川沿いの村でもいつつかハウスタンバランを訪れましたが入口の装飾的にはマプリックのものが一番であろう。少し色はくすんでいるものの、圧倒的な大きさと佇まいは独特な神聖な雰囲気を出していました。裏に回るように言われてそちらから入ると、中には暗い中に男たちと太鼓。さらに奥に行くように促され、壁で隔てられた先に一面樹皮絵で飾られた部屋があった。真ん中にチーフだという等身大の像があり、両側に化粧と衣装で全身を包んだ若い男性が二人、黙って立っている。目をとじてリズムを取るように体を揺らしていてなんだか神話の世界へ紛れ込んだような気分だった。熱気と暗闇の雰囲気にのまれて夢中でシャッターをおしたのは言うまでもない。このハウスタンバランは男性しか入れず(観光客は別)、年に2回の収穫祭などで使用するとのこと。
そこから狭い入口をとおって外へでると、最初に見た三角形の正面に出た。そこでまた化粧した男女のパフォーマンスを見せてもらう。こちらも見ごたえ十分でした。
ウェワクへ戻り帰国の途へ。
高床式の原始的な家に住み、手漕ぎのカヌーで魚を釣り、ジャングルの一部を開拓して農業を営む、精霊を信仰し、巨大な精霊の館ハウスタンバランでイニシエーションが行われる・・・。なんだか日本の原始時代にタイムスリップしたようなセピックでの日々。「われわれは生かされている。自然の力によって・・・」そんなパリンベ村の村長さんの言葉が忘れられない。文明社会で失われてしまった大切なものがここには残っている。そんなことを感じた2日間での体験をこの先ずっと忘れることはないだろう。弊社でもセピックを訪れるツアーを催行しておりますので一度訪れてみてはいかがでしょうか。きっと忘れられない貴重な体験となるはずです。
ケマセ村奇石・洞窟探検ツアー
マッドメンと記念撮影
お勧め度
ミドルセピック 5つ星
秘境中の秘境!想像を絶する神秘的な体験をしたい方におすすめです
アサロ渓谷のマッドメンの村訪問 4つ星
泥人間マットメンの村はパプアへ行ったら必ず訪れたい
ケマセ村奇石・洞窟探検ツアー 3つ星
奇石・洞窟がある森の中の探検も楽しいが愛嬌がある村人との交流も楽しい
(2016年11月 渡邊竜一)