-
エリア:
- 北米 > カナダ > バンクーバー
-
テーマ:
- 留学・長期滞在
留学生が英語を上達させるための有効な方法として、ラングエッジ・エクスチェンジというのがある。一緒に机に向かい、お互いの国の言葉をタダで教えあうのだ。通常はカナダ人と留学生の組み合わせが多いが、私はこれをポーランド人の青年と行なっている。ポーランドからカナダに来て4年以上になるコンラッドくんは英語がネイティブ並みにデキるので、彼に私の論文の文法を見てもらい、代わりに日本語を教えるのだ。本当はせっかくだから彼の母国語を習えば、ポーランド語ペラペラの日本人という稀有な存在になれるような気もする。だが学生時代にも、ちょっとお洒落だからという理由でフランス語を学ぼうとしてすぐにザセツしただけに、今から新しい言語を一から学ぶ気力はなかなか起きないのだ。
ニッポンダイスキなコンラッドくんは、歌舞伎役者の絵やジャパニーズポップスのCD(スピッツがお気に入りらしい)に囲まれた寮の部屋で暮らしている。炊飯器も持っているし、みりんに味噌、納豆など、日本食は私よりよっぽど揃えていて、いずれは日本で働いてみたいと熱い目で語る。そんな彼に日本語を手ほどきするのは責任重大なわけだが、これがなかなか難しい。なにしろ家庭教師のアルバイトすらしたことがないので、人様にものを教えるのは初めての経験である。しかも日本語は複雑怪奇ときた。特に助詞の「てにをは」は、「なんで『電車を乗る』じゃなくて『電車に乗る』と言うのか」などと聞かれると一瞬考え込む。とはいえ、こちらも言葉を扱う職業に就いている自負があるので、どうにかこうにか説明している。コンラッドくんに言わせると、日本語は英語の100倍難しく「日本人に生まれただけでラッキー」なのだそうだ。あなたも私も、日本語を自然に身に付けられた自分の境遇に感謝しようではないか。
一方、私が英語で論文を仕上げる時には、コンラッドくんに文法をチェックしてもらっている。彼は将来は教授になることを目指す院生なので、間違いを細かく、わかりやすく説明してくれる。家庭教師のバイト学生に頼むと1回25ドルぐらい取られるため、このようにタダで見てもらえるのはかなりお得だ。また、自分の国の言葉を英語で説明すること自体も英語の上達につながるので、留学生にラングエッジ・エクスチェンジはおすすめである。
では、エクスチェンジの相手をどうやって見つけるかだが、私のように友達に紹介されるほか、大学の掲示板や新聞に募集が載ることがある。そもそも、すし屋がやたら繁盛するカナダには日本文化に関心を抱く人も多いと思われるので、相手探しには苦労しないだろう。日本文化を英語とイラストで説明した本を、日本から持って来ておくと喜ばれる。ただし、喫茶店などで男性が日本人女子にラングエッジ・エクスチェンジを持ちかけてくる場合は大抵ナンパなので、引っかからないようにしましょう。