アメリカ西海岸でいま一番熱いエリアといえば、「全米で住みたい街No.1」に輝くポートランド擁するオレゴン州!最大の都市・ポートランドは、地元の新鮮な素材が支えるハイレベルなレストランを多く抱え、クラフトビール醸造所の数は世界一という、世界指折りのグルメ都市。街が誇るものづくり文化は奥深く、オレゴンの自然が創り出した絶景の数々は息を呑む美しさ!いまオレゴンを旅すべき理由を、3つのキーワードで掘り下げます!
オレゴン州やポートランドと聞いて、ピンとこない人も多いはず。まずは位置を予習しましょう!アメリカの北西部、ワシントン州の南隣にあります。成田空港から運航する直行便の所要時間は、豪・ゴールドコーストなどへの便とほぼ同じ約9時間。州の約半分を緑が占め、渓谷や山脈など雄大な自然も観光ハイライト。映画『スタンド・バイ・ミー』のロケ地としても有名です。
アメリカンスイーツ=甘ったるい そんな方程式はもう古い!
No.1 美食都市の甘さ控えめ"グルメスイーツ"
美食の街、ポートランド。ここがそう呼ばれるわけは、地元で獲れる新鮮な食材が集まるから、そしてそれを求めて全米から優秀な料理人がやってくるから。当然ローカルたちの食へのこだわりは強く、人気のお店の前にはアメリカでは珍しいという行列が。この街の食のレベルを見せつけようとまずジャブを打ってきたのは、甘~いだけの「アメリカンスイーツ」とは一線を画した"グルメスイーツ"たちでした。
昨年、代官山に日本一号店をオープンさせた「ブルースター・ドーナツ」。ポートランド本店では、オレゴンの素材にこだわって手作りしたドーナツを提供しています。ポップなピンクの一品は、ハイビスカスティー&ラズベリー味。さくさくのドーナツを覆う、素材の甘酸っぱさを活かしたグレーズが美味しく、見た目以上に繊細な仕上がりでした。オレンジ風味の洋酒(コアントロー)の入ったスポイトが豪快に挿された、コアントロー・クレームブリュレ味もおすすめ。ふわふわのドーナツをちぎってコアントローを少しずつかけながら頂くと、香りが広がり大人の顔に。表面のカリッとしたカラメルも香ばしく、捻りの効いたアッパーに早速K.O。
屋台から始まった大行列のアイスクリーム店
歴史的な建造物が並ぶ、ノースウェスト23番街にある「ソルト・アンド・ストロー」は、平日から大行列のアイスクリーム屋さん。蜂蜜&ラベンダー、ビーツ&ラズベリー&ライム、洋梨&ブルーチーズ...と、店内の黒板にはユニークなメニューが並びます。いずれも地元産の素材を活かした外れのない美味しさ。「試食は何度でもどうぞ」とのこと、筆者もちゃっかり5種類を試させてもらい、地元の有名コーヒー店「スタンプタウンコーヒー」とのコラボアイスに落ち着きました。コーヒーの味が濃く、お店のカウンターでひとつひとつ焼いているワッフルコーンもカリッとしていて美味しい。屋台(フードカート)から始まり、市内全4店舗のほかロサンゼルスにも進出、という同店の軌跡はまさにアメリカン・ドリーム。街歩きのお供に是非!
「180」で楽しめるのは、シナモンの香りを漂わせながら輪投げのように重ねられて登場する、揚げたてチュロ。王道のチョコレートのほか、店員さんおすすめのキャラメルローストピーナッツなど3種類から選べるソースにディップしても美味しいです。これも生地の甘みが上品だからできること。常連だというスペイン系の女の子が、慣れた手つきでりチュロを半分に割って食べ方を教えてくれました。
とにかく日本人の舌にマッチする「甘さ控えめ」が共通キーワードなので、食い倒れ上等。ポートランド市街はバスや路面電車などの公共交通機関が発達しており、スイーツ巡りもはかどります!
屋台のレベルが高過ぎる!若者、旅人…みんなの味方
フードカートで絶品ランチをGET、ピクニックへGO!
ポートランドの街中でよく見掛けるのが、小さなトレーラーで軽食を売る「フードカート」。いわゆる屋台です。その数トータルで600軒余り。これが手軽でおいしいので、若者からランチタイムのサラリーマン、OLまでが、自分のお気に入りの店へと通っています。ポートランドっ子におすすめしてもらったのは、ダウンタウン最大の屋台村「アルダー・ポッド」にある、巨大なベトナムサンドイッチ「バインミー」を売る屋台。味は、ポーク、チキン、豆腐から選べ、たっぷりの野菜がフランスパンに挟まれていてヘルシー。車で10分のワシントンパークへ持っていき、8000株を誇るバラ園や富士山に似た美しいマウント・フッドの遠景を眺めながら、ピクニック気分でかぶりつくのも最高。
ほかにも、イスラエル、韓国、チェコ料理…とさながら味の万博を見ているよう。トレーラーの車体も、三角の屋根がついていたり、カラフルなペンキで塗られた側面におしゃれなランプがぶら下がっていたり、といろいろ。ぐるっと歩いて回るだけでも楽しいです。ここで成功したフードカートは、“卒業”して路面店を持つとのこと。いうなればポートランドのグルメ登竜門でしょうか。だいたい11~15時にオープンしているので、お昼時に覗いてみて!
洗面器サイズの爆盛りサラダ屋台が大人気
お洒落なレストランが集まるディビジョン通りの「ティッドビット・フード・ファーム&ガーデン」は、2014年にオープンした屋台村。ここでの一番人気は、「ガーデン・モンスターズ」による洗面器サイズの爆盛り・グルメサラダボウル。ロメインレタス、トマト、ホウレン草の上に、たっぷりのブルーチーズとクランベリー、ピリッとアクセントになる黒胡椒がかかっている「ザ・オレゴントレイル」(7ドル、ミニサイズは5ドル)がおすすめです。
12種類のビアタップがあるフードカート「スカウト・ビアガーデン」でオレゴン産の生ビールをゲットしたら、完備されたテーブルとベンチで乾杯!サラダにビールとはちょっとシュールな組み合わせですが、サラダのリッチなトッピングが新鮮なエールによく合って単純に美味しい。日本の屋台ではあまり見ない、つけ麺も発見。食べ慣れたあっさり醤油味は、到着初日の胃にも優しく染み込みます。旅の食事の幅をぐっと広げてくれる強い味方として、フードカートをうまく利用してみては。
ローカルのおすすめ厳選!レストラン&カフェ 【ポートランド編】
外れなし!市内外のわざわざ行きたいグルメスポット
世界が注目するグルメシティ・ポートランド。作家・村上春樹さんも自著でそのレベルの高さを称賛しています。しかし選択肢の多さは、ときに時間が限られている旅行者泣かせ…。そんな時に見てもらいたい、外れ知らず!のローカルによるお薦めをまとめました。
ダウンタウンから車で約40分、景勝地コロンビア渓谷にある「サンダーアイランド・ブリューイング」は、ご飯も景色も美味しく、郊外にあってもわざわざ行く価値あり。ここで作られた新鮮な地ビールと、チキンパテやチーズ、フルーツなどの盛り合わせ(9ドル)や、バーガー(10ドル)を召し上がれ。必ずテラス席を陣取って、雄大なコロンビア川の流れや山の稜線の眺めもセットで堪能しましょう。(クラフトビールについては、次の「クラフト」のコーナーでみっちり紹介します。)
ポートランド市内・サウスイーストにあるビストロ「ル・ピジョン」は、予約必須ながら絶対に行きたいお店(公式HPからネット予約可)。野菜やお花をふんだんに使った美しい盛り付け、素材を活かした繊細な味付けは絶品です。権威ある賞を授かった名店ながら、肩肘張らないカジュアルな雰囲気が好感度大。アラカルトをシェアして食べても大丈夫です。
2016年オープンの”高級フードコート”で最旬グルメをチェック!
朝食やブランチなら、ダウンタウンからバスで約20分の住宅街にある「スウィーディーディー」へ。「ブレックファストプレート」の山盛りサラダとふわふわのトーストにパクつけば、楽しい一日が始められそうな予感。レコード店がお隣にあるため、店内のBGMもレコードやテープから、というお洒落っぷり。60年代風のレトロなインテリアとおしゃれなスタッフの服装がマッチしています。8時の開店と同時に各テーブルへ置かれるグリーンのブーケが、可愛らしいムードを引き立てていました。締めのコーヒーは、インテリアが唯一無二の「シーシー・モーターコーヒー・カンパニー」へ。カウンターの前にはバイクが鎮座、壁際の棚にはカラフルな柄のヘルメットがずらっと並び非常にカッコいい。バイク関連グッズショップも併設しており、今日もバイク野郎達が集っています。
どうしても迷ってしまう場合は、2016年4月にソフトオープンしたばかりの“おしゃれフードコート”「パインストリート・マーケット」へ行けば間違いなし。ソーセージにベーコンにバナナ、などユニークな組み合わせが14種類ある‟高級ホットドッグ“の「OP ヴルスト」や、「ソルト・アンド・ストロー」のソフトクリーム専門店「ウィズバン・バー」など、ポートランドの旬なグルメが集まります。スペイン料理「ポヨ・ブラボー」の小皿料理タパスや本格的な味付けの鳥の丸焼きも美味しかった!個性的な10余りのお店がしのぎを削っているので、やっぱりここに来ても何を食べようか迷ってしまうかも…ごめんなさい。
Maps
世界一の地ビール天国で、クラフトビールにおぼれる!
千差万別のクラフトビール、好みの味を探そう!
オレゴンに来て外せないこと、それはクラフトビールの飲み歩き!ポートランドは、「市内にあるブリュワリーの数が世界一」というビール天国。小規模の醸造所が市内に68箇所あり、まるで手工芸品(クラフト)のように職人がそれぞれ丹精込めて作り上げています。
ビールはあんまり…という人も、騙されたと思って1杯飲んでみてください。まずはダウンタウンのホテル街にほど近い「ベイリーズ・タップルーム」で舌慣らし。日替わりを含む約25種類もの樽生のうち、3分の2はオレゴンの地ビール。2007年のオープンから地元客、観光客の両方で賑わう専門店です。好きなビール5種を少しずつ試せる「サンプラーフライト」を頼めば、必ず好みの一杯が見つかるはず。キレのあるラガーからチョコレートのような風味のスタウト(黒ビール)まで、一つ一つが全く違う味わいであることに驚きます。自分の好みがわかったところで、それぞれの醸造所へGO!
サウスイーストにある「ザ・コモンズ・ブリュワリー」は、ベルギースタイルの芳醇な香りのビールが自慢で、どちらかというと女性にオススメ。市内のパン屋とコラボして考案したというビールを口に含むと、まるでレーズンパンのような香ばしさの後にモルトのふくよかな甘みを感じます。チーズスタンドでは、熟成チーズや軽食を提供。醸造タンクとパブが一つ屋根の下にある開放的な空間で、出来立ての美味しさを心ゆくまで味わいましょう。
地元発宇宙経由!?恵まれた素材を活かした美味さ
州全体では220以上もの醸造所があるオレゴン。ここがビール王国たるゆえんは、原料の麦芽、酵母、ホップ、そしてカスケード山脈から流れる軟水、と良い素材が全て州内で賄えるから。州第二の都市・ユージーンにも魅力的なブリュワリーが15あります。「アグラリアン・エールズ・ブリューイング・カンパニー」は、敷地内の農園で15種類ものホップを自家栽培。数種類をブレンドすることで、アロマや苦味が織り重なる奥深い味になります。シーズンには摘み取り体験もできるとか。自家製の野菜料理も人気で、休日には農園横の芝生やドッグランがローカルで溢れます。
同じくユージーンの「ニンカシ・ブリューイング・ブリュワリー」は、ローカルが創設し、全てのビールに地元の素材を使うザ・地元密着型。ホップを大量に使ったインディアン・ペールエールは、マンゴーやアプリコットのようなフルーティーなアロマと苦味のバランスが良い、完成度の高い一品です。2006年創業と比較的新しいにも関わらず、味が評判を呼び州で三番目の売上量を誇る醸造所へと急成長。一度宇宙へロケットで打ち上げ、戻ってきた酵母を使って醸造もしちゃうという、文字通り“ぶっ飛んだ”ブリュワリーです。
「クラフトビール以外はビールじゃない!」と熱っぽく語るオレゴンっ子にも遭遇。ここで土地ごとに異なるビールの味わいと奥深さを知ると、日本に帰っても産地と銘柄でビールを選ぶようになってしまうかも。
日本語OK!食を深く知るウォーキングツアーが人気です
裏話を知って、ビールはもっと美味しくなる!
より深く食の職人文化を知りたいなら、日本語OKのフードウォーキングツアーへの参加がおすすめ。醸造所巡りツアーでは、市内厳選3箇所をガイドと見学、試飲して回ります。散歩しながら巡れるのは、ブリュワリーがひしめくポートランドならでは。日本在住経験もあり、東京や大阪でビールのトークショーをするほど知識豊富なレッドさんが、ガイドを勤めてくれるので安心です。
集合場所の「イクリプティック・ブリューイング」で、初っ端から4種類のビールを試飲しながら、原料となるホップ、麦芽を触ったり嗅いだりしてビール造りのいろはを学びます。そしてビール片手に(!)、工場で実際の製造工程を見学。大きなタンクの横では瓶詰めが行われていました。若者に人気の旬なエリア・ミシシッピの街歩きも楽しみながら、次の醸造所へ移動します。
「夫や彼氏の付き添いで、最初は興味を持たずに参加した女性たちも、ツアー後にはクラフトビールのファンになっています」と、レッドさん。参加者を引き付けるポイントは、ビールづくりの裏話が聞けること。二軒目に訪れた「ストームブレイカー・ブリューイング」のオーナー・ロブさんは、元々はケグ・ウォッシャー(樽洗い)出身。レストランでいう皿洗いのような修行の末、前経営者からこの醸造施設を購入。現在では子連れにも優しいブリューパブ(醸造所併設レストラン)として地元に愛されています。つくり手と触れ合ってから飲むビールは、より美味しく感じるから不思議です。三軒目では軽食もついて、一人$125。
サードウェーブコーヒーって、本当はこういうこと
コーヒーの消費量も、全米トップレベルのポートランド。街中には素敵なカフェが目立ちます。コーヒー愛が高じて大手メーカーを辞めツアー会社を始めたローラさんのガイドで、赤レンガの建物が並ぶパール地区の人気カフェを巡るツアーに参加してみてはどうでしょうか。
ローラさんのレクチャーで、最近日本でも流行している「サードウェーブコーヒー」をそもそもの意味から知ることができます。オシャレで高いコーヒーのこと、と筆者は勘違いしていましたが、「産地や品種による味の違いを、丁寧に一杯ずつ淹れて楽しもう」という潮流、というのが真の意味だそう。
バリスタも使うという、コーヒー用語が載った円型チャート表で説明を受けてみて、驚いたのは味の表現の多彩さ。円の中心には「苦味」や「酸味」などのベーシックなものが並びますが、外側へいくにつれてレモン、ガーリック、オニオンなど食べ物に例えた様々な表現が広がり、ワインのような奥深さを感じさせます。知識を深めたあとは、ローラさんおすすめの「シスターズ・コーヒーカンパニー」などのカフェや焙煎所5つを見学。本格的なハンドドリップやテイスティングの方法を習ったりと、コーヒー好きは大満足の3時間でしょう。
DIYのメッカでクラフトマンシップに触れる
職人の卵が羽ばたく“ジム”
日々のライフスタイルにも強いこだわりを持つローカルたち。彼らによって、「良いものを長く使う」「自分好みにカスタマイズする」といった精神がこの土地に根付いています。その対象はアクセサリーや自転車から(ポートランドは全米で一番自転車通勤をする人が多い都市!)、家までと大小様々。日本でも流行している「DIY」(日曜大工)のメッカ的存在とされています。仕事の後、まるでジムのようにローカルたちが通うのは、DIYのための共同作業場「ADX」。会員になれば3Dプリンターなどの高額な機械を自由に使うことができるので、職人の卵たちが初期投資無しで制作活動に励む場にもなっています。成功しここを巣立った職人の数は100以上。ジュエリー、版画、家具などジャンルごとのスペースで作業に没頭する人々の姿が見受けられます。ランプやトートバック作り教室など、観光客向けのワークショップもあるので、DIY文化を垣間見てみては(メールで要予約・英語)。
理想の家づくりを妄想しながら歩くと楽しいのは、非営利団体が運営する建築資材のリサイクルショップ「リビルディング・センター」。家を改装、解体した際に不要になった窓やドア、照明器具や便器(!)までもが所狭しと並び、新しいオーナーを待ち侘びています。凝ったデザインのものが多いので、宝探し気分で訪れてみては。
消費税ゼロの街で、一生もののハンドメイドグッズに出合おう
そんなハンドメイドを愛する街で、お薦めしたいのが一生もののレザー小物のお買い物。なんとポートランドは消費税なしのショッピング天国なので、運命の出合いを求めてみて。ハンドメイドの革製品メーカー「オロックス・レザー・カンパニー」のご主人ホセさんは、栃木にかつてあったテーマパーク「ウェスタン村」で6年間革職人をしていた親日派。工房兼ショップで3人の息子たちと黙々と作業に励む姿に、いぶし銀の品格があります。見本で展示されてある5年間使い込んだ財布は、柔らかく手にしっくりと馴染んでいい感じ。ベルト、iPhoneケース、イヤホンコードホルダーなど多彩な革のアイテムは、一見ワイルドながら仕立てが良いので女性が使っても素敵です。
日本にもファンが多い、ポートランドの老舗ブランド「ダナー・ブーツ」の靴も質が良くてカッコいい。ダウンタウンの路面店でお気に入りをゲットして、幾多とあるオレゴンのトレッキングコースに挑むときっとサマになります。ポートランドっ子を真似して、街中のおしゃれで履いても◎。
Maps
大自然を探しに小旅行!絶景ドライブは外せないアクティビティ
滝巡り~日本人の心を打つ「オレゴン富士」
グルメに買い物…旅の目的として十分ですが、オレゴン滞在の満足度を2倍、3倍にも引き上げてくれるのが、日本にはないレベルの大自然探訪!ぜひポートランドから州中西部のベンド、ユージーンを訪ねる2泊3日程のドライブ小旅行を組み込んで、様々な表情を持つ‟絶景狩り”に出掛けてください。初めてオレゴンに来た筆者も、ポートランドだけ観て帰るのは勿体ないと感じました。
ポートランドから車で30分ほどの地点から始まる「コロンビア川ヒストリック・ハイウェイ」。アメリカで4番目に大きな川・コロンビア川に沿い、景観美を重要視して建設された高速道路とあって、この道の傍らには景勝ポイントがたくさん。最初の寄り道地点は、断崖に建つ石造りの建物「ビスタハウス」。ここから一望する、輝きながら流れるコロンビア川の姿は、息を呑むほど美しいです。また、道沿いには100を越える滝も点在。75mの落差を真っ直ぐ落ちる優美な「ラトレル滝」や、細い流れが馬のしっぽに似ている「ホーステール滝」などを巡って癒されて。時間があればごまんとあるトレッキングコースに挑戦するのも良いでしょう。
ハイウェイに別れを告げ、ビクトリア様式建築が残る小さな街・フッドリバーを通過。森の間から州最高峰の山「マウント・フッド」がにょっきりと顔を出すと、あまりの美しさに声を上げてしまいます。標高3425mの見事なその姿から「オレゴン富士」とも呼ばれるそう。日本人ならグッとくること間違いなし。
ワイルド過ぎる‟クライミングの聖地”で恐怖体験
針葉樹林が生い茂るマウント・フッドの裾野を南下し続け、セントラルオレゴンに差し掛かると、突然風景が変わります。州の南北に走るカスケード山脈の東側にあたるこちらは、「ハイデザート」と呼ばれる乾燥地帯。雨が少なくカラッとした気候で、荒野が広がります。
突如現れたのは、川の両脇に直立した絶壁。ここ「スミスロック州立公園」は、スポーツクライミング発祥の地。240mもの岩壁に挑むため、世界中からこの“聖地”へと猛者が集うそうです。目を凝らすと、巨大な玄武岩の表面に張り付いているクライマーたちがいました。さらに上方、見てはいけないものを目撃。岩のてっぺんで綱渡りしている人がいる…!あんぐりと口を開けて見つめていると、バランスを崩して落下!…命綱付きだったので事なきを得ました、ホッ。野性味溢れる光景は一見の価値ありです。
宿泊はスミスロックから45分ほどの、セントラルオレゴンの中心都市・ベンドで。日の入りまでに到着し、カスケード山脈にゆっくりと沈む夕陽を見るのがおすすめ。翌日はベンドからユージーンへ。車窓には再び豊かな森が現れ、静かな湖も多く心洗われます。約2時間半でユージーンへ到着。ここからポートランドまで一気に北上しても3時間ですが、できれば2日目はユージーンにも泊まってオレゴン大学を中心とした大らかな街の魅力を楽しむのが良いでしょう。オレゴンの山道はよく整備されていて走りやすく、ほとんど信号がありません。女の子同士の旅でも、わいわい言いながらの絶景ドライブは絶対楽しいはずです!
街中もアウトドア天国!緑に包まれてリフレッシュ
ビールを100倍旨くする…ダウンタウンのそばで本格トレッキング!
州の約半分が緑に覆われる、豊かな自然のオレゴン。いつでも人間のそばに寄り添ってくれているから、街中でも気軽に本格的なアウトドアを楽しむことができます。
ポートランドのダウンタウンから、車でわずか10分。街の西側の住宅街に隣接した、全米で最も広い森林公園「フォレスト・パーク」は、ハイキングにぴったり。約20平方kmと山手線の内側の1/3の面積にあたる土地に、112種の鳥や62種もの哺乳類が暮らす深い森が広がっています。全長113kmのハイキングトレイルは、いくつもの短いコースに分かれているので、時間と気分に合ったものを選べます(専用の地図アプリも用意されているほど)。
この日筆者が歩いたのは、往復約4.5kmの「リッジ・トレイル」。住宅街のメインストリート・スカイライン大通りに交差するスプリングヴィル通り沿いの駐車場から、20mはあろうカエデなどの木が生い茂る森の中へ入ります。空まで覆うほどの緑色のカーテンに包まれ、思わず深呼吸。若葉の間からは優しい木漏れ日が。鳥のさえずりだけが聞こえ、リスが横切ることも…。時たま、トレイルランナーや犬を散歩させる近所の人とすれ違い、挨拶を交わします。標高304mからスタートし、ひたすら坂を下るのがこのコース。30分ほどゆっくり歩くと突然、ウィラメット川にかかる、エメラルドグリーンが美しい「セントジョンズ橋」が目の前に現れます。変化に富んだ景色は、都会の森ならでは。筆者は午前中にトレッキングで汗をかいたところで、ダウンタウンへ降りてビールを呷りました。その味は、いつもの100倍くらい美味しかった…。
『スタンド・バイ・ミー』のロケ地も緑豊か
第二の都市・ユージーンの街中にもアウトドアスポットがあります。街の北側からダウンタウンを一望できる、小高い丘「スキナービュート・パーク」。先住民カラプヤ族が暮らしたという歴史あるこの地には、円柱状の岩が何本もそびえ立つ天然のロッククライミング場があります。公式サイトで紹介されているだけで40通りの登り方があり、ローカルたちが今日も岩壁に挑んでいます。
ユージーンの北にある、緑に囲まれた小さな町「ブラウンズビル」。ここは映画『スタンド・バイ・ミー』のロケ地として有名です。登場人物である少年たちの故郷として撮影が行われた、まさに冒険のスタート地点。劇中に登場する鉄橋やレトロな町並み、少年の家などが当時のままの姿で見られます。森の中を探せば、彼らの秘密基地・ツリーハウスもあるそう。2016年はアメリカでの本作公開から30周年にあたり、7月にはこの町で賑やかな記念イベントが開催されるそうですよ!
Maps
SNS映えも全米イチ!No.1空港で買い物からグルメまで
オレゴンっ子が旅から帰ってきて、目にしてほっとするもの。それは...なんと空港のカーペット。森を思わせる緑色の布地に現代アートのような幾何学模様が散りばめられた「PDXカーペット」は、1987年に”初代”がデザインされてから、州の玄関口・ポートランド国際空港を象徴する存在として、パターンを刷新しつつも利用客を見守り続けてきました(※PDX…ポートランド国際空港の3レター、またはポートランドの愛称)。SNS「Instagram」上に、「#pdxcarpet」のハッシュタグ付で投稿された画像は、約8万枚にのぼります(2016年5月時点)。売店には関連グッズもたくさんあり、いかに愛されているかが伝わってきます。
ショッピングゾーンは、「ナイキ」や「コロンビア・スポーツウェア」などオレゴン州に本社があるメーカーや、市内のランドマーク的存在の本屋「パウエルズ・ブックス」、そして街にあったような屋台村まで、ほとんどが地元の企業で構成されているのが特長。空港だからといって割高な価格ではないので、筆者も一気にここでお土産を買いました。クラフトビールやワインは、保安検査通過後に購入しましょう。特産品ショップ「メイド・イン・オレゴン」には、旅程で訪れた醸造所の瓶がずらりと並び、思い出が鮮やかによみがえってきます。もう一度、空港に着いた日へ戻れたら…なんて名残惜しい気分に浸るのでした。
「No.1」だらけのポートランド。そのエントランスである“PDX”も、定刻通りに離陸する便の多さや美味しいレストランなどが評価され、米大手旅行専門誌が選ぶベスト空港に3年連続で輝きました。至る所でピアノやバイオリンの生演奏があったり、深夜~早朝に着いた利用客のために24時間営業のショップが複数あったり…と、快適に過ごせる工夫が随所になされた空間でした。ちなみに搭乗ゲート隣に、「ローグ・エールズ・パブリックハウス」という地ビールのレストランがあるので、ジェット機を眺めながらダメ押しの喉潤しがおすすめ。
市内へのアクセス:ダウンタウンまでMAXライトレールで約40分
直行便はデルタ航空オンリー!快適なフライトを
現在、日本とポートランドを結ぶ直行便を運航している唯一のキャリアは、デルタ航空。成田空港から片道9時間余りのフライトを、よりあっという間にしてくれるのは快適な機内設備です。エコノミークラスにあたる「メインキャビン」でも、全席にタッチパネルの個人モニターが付いており、日本語の映画や音楽、ゲームなどのエンターテインメントをオンデマンドで楽しめます。特に映画のタイトル数は、地球を何周しても見切れないような豊富さ。さらにアルコールが無料で楽しめます。ジンなどスピリッツの小瓶も用意されているので、トニックウォーターやトマトジュースと一緒に頼み、カクテルを作って上級者顔をしてみては。全クラスで、スターバックス®コーヒーが楽しめるのもうれしいです!
おすすめしたいのが、ラクラク足を伸ばせるスペースと、メインキャビンに比べて約1.5倍深く傾くリクライニングシートがうれしい「デルタ・コンフォートプラス」へのアップグレード。席の余裕と優先搭乗権、歯ブラシ付きのアメニティキットがついてきます(海外のホテルでは歯ブラシを置いていないことがあるのでありがたい!)。機材にもよりますが、足元には電子機器充電用コンセントも完備。なお、コンフォートプラスの座席は、空きがあれば搭乗当日に空港の自動チェックイン機やカウンターでも申し込むこともできます。が、筆者が搭乗3日前に予約した際には既に残席3だったので、特にグループの場合は事前の予約が無難です。
予約など手続き時に活用したいのが、スマートフォンやiPadのアプリ「Fly Delta」(英語のみ)。航空券の予約・変更のほか、チェックイン(予めやっておくと長い列に並ばずに済むので◎)、運航状況の確認などもできて便利です。インストールしてさらに快適なフライトを!
様々な面で「No.1」に輝くオレゴン州・ポートランドの旬な魅力を、感じて頂けたでしょうか。新しい旅先を探している人、グルメとビールを愛してやまない人、アメリカ大陸は初めてという人も、この夏休みはオレゴンを訪ねてみては。一生忘れられない旅になること、請け合いです!
最終更新日:2016年5月24日